パパと呼ばないでU


 

娘が3歳を過ぎた。これぐらいになると色々な面白い事を言い出す。

機嫌の良い時は、「お父さん、だ〜い好き」と言う。
私は嬉しさのあまり顔をクシャクシャにして、喜び泣きをする。
寝起きで機嫌の悪い時は、「お父さん、だ〜い嫌い」と叫ぶ。
「何言ってんだコイツは」とその場では笑い飛ばす。
本当はその言葉に傷つき動揺して、女房がいない所でシクシク泣いている。



買い物に行く電車の中では、

「ねぇお父さん、あの人頭が剥げている」と大声で叫んだりする。
恥かしいから知らん振りをしていると、娘はあいづちをするまで何回も同じ言葉を繰り返す。
子供はしつこい。
逃げ出したい衝動に駆られる。
相手に悟られないよう、「そんな事を言ってはダメよ」と娘の耳元で囁く。
すると娘は「どうしてダメなの!」と大きく甲高い声で聞き返してくる。

「あの人はね、会社では怒られ家では怒られお小遣いを削られながらも毎日コツコツ働いてきて、それであんな頭になってんだよ。あの人が悪いんじゃないよ。男は辛いんだよ。そしてね・・・・・・・・・」

こう言って娘を納得させたいが、彼女はまだ3歳。無駄な抵抗です。



お父さん、ナイスショットしてと娘が言う。ナイスショットとは勿論ゴルフのことです。

家の前で素振りをしていると「お父さん、私もナイスショットしたい」と娘が走り寄って来る。
重さを考えて9番アイアンを娘に持たせてやる。

ここでグリップがこうだの、スタンスがどうだのとかレッスンはしない。
私が教えた人はどうしてかみんな下手になっているからだ
娘には自由に振らせている。

私のスイングを真似して、同じようにクラブを振っている。
しかし5分もすると飽きてくる。クラブを餅つきの杵のように使い、アスファルトをガンガン叩いている。
楽しそうだ。怒るわけにもいくまい。

さらに虫を捕まえる等と言い出し、カマ代わりに9番アイアンで草を掻き分けている。
嬉しそうだ。怒るわけにもいくまい。

次は砂場だ。クラブヘッドの先で砂を掻き集めて山を作っている。
娘は「お父さん、ケーキができたよ」と喜んでいる。
上手に出来たケーキだ。怒るわけにもいくまい。

そんな時、女房の姿を見つけた娘は「おかあ〜さん!」とピョンピョン飛び跳ねながら家の中へと消えていく。
アスファルトで傷が付けられ、草の緑色が着いた9番アイアンは、砂にまみれて砂場に置き去りのまま。
娘は幸せそうだ。怒る気力も無い。


 

 

パパと呼ばないでTはこちらへ←

 

読んで頂いてありがとうございます

Copyright (C) 2001 [こんなやつらとゴルフがしたい] All rights reserved.